はじめてのWeb講師【1】 ― 専門学校のWEBの講師になった話

突然かかってきた一本の電話。
それが、私が再び「専門学校のWeb講師」として教壇に立つきっかけになりました。

こんにちは。Webデザイナーの佐光智子です。

今日から、私が“Web講師”として感じたことや学んだことを、少しずつ綴っていこうと思います。

どこかの誰かの背中を、そっと押せますように。

非常勤講師は楽じゃない

実は、専門学校で教えるのは今回が2回目です。

最初の学校では、Photoshopや色彩について教えていました。でも、週2回の授業は想像以上にハードで、本業との両立もうまくいかず、体調まで崩してしまいました。

結局その学校では一年で続けられなくなり、「私には無理だな…」と少し落ち込んでしまったほどです。

セミナー講師の経験はあったものの、専門学校はまったく別世界。

それが正直な感想でした。

だから今回のお話をいただいたときも、すぐには返事ができませんでした。

前回の失敗が心に残っていたからです。

それでも、「今の自分ならできるかもしれない」と小さく前向きに思えた私は、

と正直に伝え、覚悟を決めて受けることにしました。

……ところが、ふたを開けてみれば、気づけば全部担当している私がいました。
(これは、講師あるあるですよね…涙)

Web講師という仕事の“見えない部分”

授業は思い通りにならない

Webの授業は「技術を教える」だけではありません。
考え方や姿勢、楽しさまで含めて教える仕事です。

でも、現実の授業はなかなかスムーズにはいきません。

  • ブログを知らない
  • Yahoo!ポータルを見たことがない
  • デザインの“整列”という概念もない


そんな学生がとても多いんです。

SNSや動画で育った世代なので、“私たちの当たり前”は通用しません。
1から10まであるなら、レベル1どころか0.5からのスタートの子もいます。

渡した本は、学ぶというより、“音読”しているだけ。
デザイン感がまったく育っていない子もいれば、少し発達面が気になる子もいます。

恋愛、夜更かし、アルバイト。
多感な時期ですから、授業だけに集中するのは難しいのも当然です。

だから、どれだけがんばっても思い通りの授業にはならない。
これが非常勤講師のリアルなんです。


教材作りの大変さ

常勤の先生と非常勤の先生では、授業準備の負担がまったく違います。

非常勤は、本業の合間に準備をします。
忙しい時期は、睡眠時間を削ることもあります。

しかも、学生は本を読んでも理解していない。
授業中に話しても聞いていない。
なのに実践の時間になると質問が来ない…。

だから、

  • 進まない
  • 伝わらない

この二つが当たり前のように起こります。

そのため、私はできるだけスライドを作り、後から見返せるよう動画化しています。
今の時代の学生には紙の教材だけでは届かないからです。

Web制作を教えるのが難しい理由


Web制作の授業は、
理論(HTML+CSS)と感性(デザイン)を混ぜて教えます。

この組み合わせは、学生にとって地獄のような授業です(笑)

私自身も、起業して3ヶ月でHTML+CSSをあきらめたぐらい苦手でした。
だから、その大変さは痛いほどわかります。

さらに、

  • ツールがどんどん変わる(Figmaはよく変わるから本も最新版必須)
  • 今日の“正解”が明日には変わる
  • 先生も常に勉強し続けないといけない

という特殊な業界。

もはや、先生ですら戸惑いながら教えているのです。
それなのに学生が理解できるわけがありません。

それでも私は、「一緒に勉強しようね、ごめんね」と言いながら教えています。

シラバスに縛られすぎないこと

前期と後期でシラバスを作った私ですが、すぐに気づきました。

シラバス通りに進むわけがない。

理由はただひとつ、
学生は2〜3倍の時間が必要だから。

授業で間に合わなかった部分を「課題にしましょう」と言っても、
ほとんど誰もやってきません。

これを何度も経験し、私は気づきました。

  • 課題は出さない
  • 遅い子のペースに合わせる
  • シラバスは「ざっくり」で十分

これが、後期になってようやくわかった真実です。

教え方で救われた一冊

教え方について本屋で色々探しましたが、なかなか自分に合う本がありませんでした。

後期になって読んだ本の中で、とても心に残った一冊があります。

教える技術という本です。

これを読むと、

  • 指導に注目してもらう方法
  • 行動を強化する方法

などがわかります。

私はノートにまとめ、何度も読み返しています。

特に印象に残ったのが、

「100点を取る成功体験で成長をサポートする」

という考え方。

簡単な問題でいいから、
みんなが100点を取れる問題を出す。

それが、学生のやる気を引き出すという内容です。

もっと早く知っていたら、
前期のテストをあんなに難しくしなかったのに…と反省しました。


さいごに

専門学校のWeb講師という仕事は、本当に大変です。
でも、学生ができなかったことをできるようになった瞬間に立ち会えると、胸の奥がじんわり温かくなります。

そして気づいたのは、

いちばん成長しているのは、実は教えている私自身。

人に教えるって、想像以上に頭を使います。
自分の弱点にも気づきますし、この年になって満足に人に教えることもできないのか?とふがいなくも感じます。

もっと勉強したくなる自分がいますが、本業が忙しい!

そろそろ今年も終わろうとしていますが、やっとここへ来て、先生としては色んなことが理解でき、落ち着いてきました。

ということで、これからも、Web講師としての日々を、少しずつ書いていきますね。
同じように悩んでいる誰かの、小さな光になれたら嬉しいです。